髪の毛 


  
彼女居ない暦=年齢の俺にもやっと彼女ができた。
彼女は色白で昔は病弱だったらしい。
学校を休みがちだったため友達もあまり居なかった
らしく学校では苛められることが多かったそうだ。
 
そんな彼女のことを俺は守りたいと思い。
勇気を出して告白した結果、付き合うに至った。
 
付き合いだして一ヶ月、彼女の家に泊まるという
奥手で童貞な俺にはハードルの高い事態が発生!
案の定、俺は彼女にキスすらすることができなかった。
 
夜中に奇妙な音で目が覚めた。
酒を飲んで彼女の家のソファーで眠ってしまったようだ。
 
(誰かがブツブツ言ってる…)
 
彼女が誰かと電話でもしているのかと思い
声のする隣の部屋を覗きこむ。
するとそこには見たことのない恐ろしい顔をした
彼女が自分の髪引き抜きをタンスと壁の隙間や
戸棚の下といったあらゆる隙間に
詰め込みながらブツブツと呟く姿だった…
 
「 おうち、おうち、あたらしい、お、う、ち… 」
 
あまりの恐怖に言葉を発することも出来ず、
俺はドアの前で固まったかのようにそのまま朝を迎えた。
 
朝になり静かになったのに気付く。
外が明るいこともあり気が大きくなった俺は
部屋をそっと覗き込んでみる。
 
するとそこには何事もなかったかのように眠る彼女の姿。
悪い夢を見ていたような錯覚に囚われそうにもなるが、
あれから寝いないので夢ではないはずだ。
 
(……どうしていいのか分からない)
眠る彼女を見て途方に暮れた俺は寺生まれで
霊感の強いTさんに電話で相談をすることにした。
 
Tさんは早朝に関わらず電話をした非常識で
支離滅裂な俺の話を黙って聞き。
 
「 よし、待ってろ!すぐ行くから 」
気分を害するでもなくそう言ってくれた。
 
急いで彼女の家の前まできてくれたTさんを
俺は彼女に気づかれないようこっそりと家に入れた。
眠る彼女をみたTさんが深刻な顔で呟いた。
「 これは…… 」
 
Tさんは俺を自分の後ろに下がらせた後、
手で制しながら念を押したように言う。
「 俺の後ろに下がって見てろ、絶対に前には来るなよ… 」
 
彼女の前に立ったTさんが呪文のようなものを唱え
「 破ぁ!! 」っと叫んだ。その瞬間!
彼女の長い髪が燃え上がり、
バサッと音を立てて抜け落ちた!!
 
「 姿をみせろ… 」
Tさんが彼女の抜け落ちた髪を睨みながら言うと
髪の束が女の生首になり、Tさんの喉を噛み千切ろうと
物凄いスピードで襲い掛かった!!
 
Tさんは襲いかかってきた生首を”ガシッ!”と
鷲づかみすると一喝!
 
「 こんなか弱そうな女の子に獲り着き、
自分の結界を広げるつもりか、小悪党が!! 」
 
 
   
Tさんに捕まった生首は苦しそうにうめく。
生首はTさんが掴む手に力を入れると生首が
燃え上がり断末魔と共に灰になって散っていった。
  
「 元の場所に帰りな…… 」
Tさんはしゃがみこみ、彼女の残った髪に優しく呟いた。
 
すると彼女の髪は言葉が分かるように、
フワフワと浮かび上がり彼女の頭にくっついていき
彼女の頭部は元の長い髪の毛のついた頭に戻った。
 
Tさんは彼女を起こさないようにそっと立ち上がると
ひと指し指を立て口の前にもってきて悪戯っぽく笑いながら
 
「 2人に”カミ”のご加護がありますように… 」
そういうとTさんは帰って行った。
 
寺生まれってスゴイ、改めてそう思う。