シャムネコ 


   
むかし個人のデザイン事務所でアルバイトしてたときの話。
 
事務所は3LDKのマンションの一室で、
そこでは1匹のシャム猫を飼ってた。
 
シャムネコは社長の愛人が飼ってた猫だったんだけど、
社長と愛人が分かれる際に愛人が押し付けていった猫。
そんで猫を押し付けるとき愛人は社長に言ったんだと。
 
「 この猫を私だと思って一生面倒をみなさい 」
猫にしたら愛人の言い草は身勝手だしいい迷惑だよな。
 
事は働き始めて半年くらいが経った頃に起こった。
社長と2人で残業することになったんだよ。
 
夜食のピザを頼みピザの届くまでの時間、
俺は各種資料のコピー刷り、社長はエアブラッシで作業。
別々の部屋で作業をすることにした。
 
俺がコピーをしようとした途端、
例のシャムネコがコピー機の上に乗ってきた。
 
作業の邪魔だったから退いてもらおうと
手を軽く振りながら言ったんだ。
「 ほら、邪魔だよ! 」
 
そういった瞬間、ボタン操作しようとした俺の手に激痛が!
さっきまで大人しかったシャムが突然噛み付いてきた!!
 
甘噛みなんて優しいレベルではない。
肉を本気で噛み千切ろうとする噛み方!
だって血がピュゥーって吹き出た!
肉の一部が裂けたんだって!!
 
おもわず、”うあっ!”って声がでた。そしたらまた激痛!
シャムのやつ腕に噛み付いて爪をたててやがる!
 
たまらなくなって俺は腕を思いっきり振り
シャムを振り落とした。
 
シャムは地面に叩きつけられることもなく
シュタッと着地。さすが猫。
 
怯むことなく身を低くして再び襲う体勢になり
俺に向かって威嚇の叫びをあげてきた。
「 シャァァァ―--―----ァァアアアアッ!! 」
威嚇の声はだんだん人間の泣き叫ぶ声に変わる。
耳を塞ぎたくなるような大きい声なのに
隣の部屋で作業をしている社長は気づく素振りもない。
 
よくみるとシャムは影は大きくなりシャムを覆う。
シャムは黒猫のように黒くなり段々と大きく、やがて人間の形になってきていた。
 
人の形になり、鋭い牙の生えた大きな口を下顎が
外れるんじゃないかというほど開け俺に狙いをさだめた。
  
狙いは俺の首筋!あんなのに噛まれたら死ぬ!!
 
(逃げなきゃ!!)
そう思い焦るが体はピクリとも動かない。
シャムが襲い掛かろうと前足を動かした!
  
「 そこまでだ! 」
聞いたことのある声と見覚えのある背中が。
寺生まれで霊感の強いTさんが俺を守るように
シャムと俺の間に立っていた。
 

 
俺の変わりにTさんに襲いかかろうとするシャムに
Tさんはあるものを手に持ち振りあげる!

Tさんの手にはそう……ネコジャラシ。
ネコジャラシに反応したシャムがネコジャラシに
じゃれた瞬間。Tさんは「 破ぁ!! 」と叫んだ。
 
するとネコジャラシは光だし、シャムの黒い体を引き裂く!
光に照らされシャムを覆っていた影は消え
元のシャムネコの姿に戻っていく。
 
影がネコの影に戻る瞬間、シャムのしていた首輪が
突然”パァン!”と音を発てて弾けた。
 
「 首輪に念を込めてたんだな…酷いことしやがるぜ 」
首輪がなくなったシャムは、さっきとは人(猫?)が
変わったかのように大人しくなっていた。
 
「 …なんでTさんがここに? 」
 
唖然としながら聞く俺にTさんは営業スマイルと共に
ピザを差し出して言った。
「照り焼きコンビと熱々グラタンピザですね」
 
俺がピザを受け取るとTさんは颯爽と去っていった。
”まいど、ありがとうございます!”の言葉と共に。

寺生まれってスゴイ!俺は熱々のピザを頬張り
ハフハフしながら思った。